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【3920】アイビーシー株式会社 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2025年4月9日に実施したIRインタビューをもとにしております。

アイビーシー株式会社は「IT障害ゼロ」を目指し、ITインフラの安定稼働を実現するプロダクトやサービスを提供しています。

代表取締役社長CEOの加藤 裕之氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

アイビーシー株式会社を一言で言うと

「IT障害ゼロ」を目指す会社です。 

アイビーシーの沿革

アイビーシー株式会社 代表取締役社長CEO 加藤 裕之氏

創業の経緯

アイビーシー株式会社(以下IBC)の創業は、日本のインターネット黎明期まで遡ります。

当時、ソフトバンクがブロードバンドルーターを無料で配布し、通信事業に参入しようとしていた頃のことです。

当時のIT業界は大手メーカーが市場を独占しており、スマートフォンで動画を見るような、今では当たり前の光景は想像もつかない時代です。

私自身はその中で、主にBtoB向けにコンピュータ・ネットワーク機器や回線網を提供する営業担当をしていました。

当時のネットワーク環境は快適とは程遠く、通信回線の多くがベストエフォート型で、安定した通信環境を得るには、高価な専用回線を用意するほかありません。

さらに、企業にとってネットワーク環境は非常に重要ですが、技術的なハードルも高く、パソコンをネットワークに接続する作業はとても複雑でした。

オフィス内の配線や、ビル間の通信を行う際にも、大掛かりで手間のかかる工事が必要だったんです。

その頃は、NECや富士通など大手メーカーがネットワークインフラを支えていましたが、ネットワークの中で一体何が起きているのか、問題点やボトルネックがどこにあるのかを正確に把握できる人材は非常に少なかったように思います。

やがて、技術の進歩によってネットワーク環境のダウンサイジングが進み、MicrosoftやCiscoといった海外企業が台頭し、インターネットが広く普及していきました。

これに伴ってネットワークの重要性が一層増したものの、多くの方にとって、その中身は依然としてブラックボックスのままでした。

特に複数のベンダーの機器が混在するマルチベンダー環境では、問題点を特定するのは容易ではありません。

その状況を目の当たりにして、「ネットワークの内部で何が起きているのかを正確に把握すること」、つまり「見える化」することが非常に価値ある取り組みになると考えました。

ネットワークのどこに問題があり、どこで余計なコストが発生しているのかを掴み、そのデータを分析・活用することで企業の課題解決につながるはずです。

さらにその情報はエンドユーザーだけでなく、SIerやリセラーにとっても有益で、コスト削減や業務改善に役立つはずだと確信しました。

こうして、「ネットワークの見える化」によって企業や業界に価値を提供することができると考えました。

そして「ブロードバンド」という言葉が世に出てきたタイミングの頃に、「IBC(インターネットワーキング・アンド・ブロードバンド・コンサルティング)」を立ち上げました。

「System Answer」の誕生

創業当初は、サーバーやネットワーク、セキュリティ、アプリケーションといったシステムの状態を調査・分析するサービスを提供していました。

ただ、それらは一件ごとの受注となるため、エンジニアがかける工数に見合った利益を確保するのが難しい状況でした。

そこで事業の継続性を高めるためにも、自社製品を作って提供することに舵を切ったんです。

最初に開発した製品は、「誰でも簡単に」そして「詳細なデータを取得」というコンセプトで開発をおこない、主に中規模ユーザーを対象としてリリースをした「BTモニター(ブロードバンド・トラフィック・モニター)」でした。

リリース後は、ユーザー様からお寄せいただいたご意見、ご要望を基に、機能の拡張・改善を進めていった結果、対象ユーザーの拡大に伴って、システムに潜む問題点を浮かび上がらせ、その答えを導くことを目的とした、現在の主力製品である「System Answer」の開発につながりました。

「System Answer」は、130以上のメーカーの機器が混在するようなマルチベンダー環境でも、ネットワーク機器やシステムの状態を一元的に把握できるツールです。

トラブルが発生した際にも原因を迅速に突き止められ、素早い対応が可能になります。実際に、東日本大震災のような緊急事態でも「System Answer」を活用し、通信障害の状況をリアルタイムに把握できました。

かつてのような閉じられたネットワークの時代とは違い、現在はTCP/IPをベースにしたインターネット接続が当たり前になっています。

あらゆるシステム・機器がIPプロトコルで繋がっていて、社会インフラを担う事業者様やインターネットを利用したサービス提供事業者様等において、ネットワークの安定稼働は不可欠な課題です。

そこでSystem Answerが裏側からしっかりと監視を行い、安定したサービス提供を支えています。

さらに最近では、AWSやAzureといったクラウドサービスにも対応しました。

企業がオンプレミス環境とクラウドを併用するハイブリッド環境でも、全体の状況をまとめて「見える化」することができます。

このように「System Answer」は、単なるBtoBだけではなく、BtoBtoCのマーケットでも幅広く使われており、情報システム部門の担当者が迅速で的確な判断を行うための重要なツールになっています。

アイビーシー株式会社 2025年9月期 第2四半期 決算説明資料 より引用

アイビーシーの事業概要と特徴

概要

私たちIBCは、「IT障害をゼロにする」というミッションを掲げ、企業のITインフラが常に安定して動くためのサービスを提供しています。

主力となるのは、自社で開発したIT運用管理ソフトウェア「System Answer G3」です。

この製品を導入いただくことで、企業内のITシステムが問題なく動いているかを簡単に把握し、管理することができます。

たとえば、企業内にはサーバーやネットワーク機器、ファイアウォールなど、様々なメーカーの機器があります。

「System Answer G3」は、これら複数メーカーの機器から、CPU使用率やメモリ使用量、通信量といった性能データを自動的に収集します。

収集した性能データはグラフや表を使って分かりやすく整理し表示しますから、「今、どの機器に負荷が集中しているのか」「どこが原因でシステムの動作が遅くなっているのか」といった状況を簡単に確認することができます。

さらに、CPU使用率やメモリ使用量等について、システムの管理者が任意に設定した基準値を超える状態や、普段と異なる動き(急に通信量が増えるなど)を検知した場合、すぐにアラートを出して管理者に知らせますので、迅速な対応が可能です。

また、日々蓄積された性能データを活用して分析を進めることで、「将来的にメモリが不足しそう」「ネットワーク回線の増強が必要になりそう」といった、先々のITリソースの調達に関する計画も立てやすくなります。

「System Answer G3」は企業のITインフラの健康状態を常に見守り、問題が起こる前に知らせてくれる便利なツールです。

そして未来に向けたITインフラ計画にも役立つ存在として、多くの企業様にご活用いただいています。

さらにIBCでは、単にソフトウェアの提供だけにとどまらず、お客様のIT運用業務を代行するマネージドサービス「SAMS(Speedy Action Management Services)」も提供しています。

運用に関わる業務全般をサポートすることで、より安心して本来の業務に専念いただける環境づくりのお手伝いをしています。

アイビーシー株式会社 2025年9月期 第2四半期 決算説明資料 より引用

事業における優位性

独自性の高いツール「System Answer G3」とソリューション力

私たちIBCは、ITインフラの性能監視を専門に手掛けるメーカーとして、長年積み重ねてきた経験とノウハウをもとに「System Answer G3」を提供しています。

この「System Answer G3」は、世の中に多く存在しているフリーツールとは明確に異なります。

もちろん、高度な技術を持つエンジニアがフリーツールで時間やコストをかけて作り込めば、それなりに活用できるかもしれません。

しかし、現在の企業では、CiscoやMicrosoft、AWSなど様々なメーカーやサービスが入り交じるマルチベンダー環境が一般的になっており、あらゆる企業で幅広く使えるように汎用性を高め、十分な品質で運用可能な状態にするのはとても難しいと感じます。

IBCではまさにそうした「汎用性の高い見える化」を追求し、製品化してきました。

「System Answer G3」は130社以上、5,300種類を超える多様な機器や監視項目に対応しており、当社のツールは複雑なマルチベンダー環境にも簡単かつ柔軟に対応できるのです。

アイビーシー株式会社 2025年9月期 第2四半期 決算説明資料 より引用

かつての大企業では、自社専用の監視ツールをスクラッチ開発して閉じた環境で運用することが当たり前でした。

しかし今は、複数ベンダーの機器やクラウドサービス、さらにはオンプレミスとクラウドが混在するハイブリッド環境が主流です。

このような複雑で絡み合ったシステム全体を一元的に俯瞰し、すべての状況を可視化できる製品を開発している会社は非常に少ないのではないでしょうか。

もちろん理論上はフリーツールを活用して自作することも可能ですが、それを実現するためにはサーバー、OS、ネットワーク機器など幅広い領域にわたる知識と豊富な経験を備えた高度な技術者が不可欠です。

現実的にそれができる人材は限られています。

私たちIBCは、こうしたニーズにしっかりと応えるための独自性の高い製品を持っていること、それが最大の強みであると考えています。

アイビーシー株式会社 2025年9月期 第2四半期 決算説明資料 より引用

ソリューション力の高さと優秀な人材

IBCにはインフラ系に強い技術者が多く在籍しています。

インフラエンジニアは普段あまり表舞台に出ることがありませんが、私たちの会社ではマルチベンダー環境で多種多様な機器を日常的に扱っています。

そのため、一人ひとりが幅広い視点と技術を自然と身に付けることができます。

一般的に、一つのメーカーに所属し特定の機器のみを扱う環境では、その範囲内では専門性が高まりますが、視野が広がりにくくなる傾向があります。

一方IBCの技術者は、メーカーの枠を超えて数多くの製品を扱い、広い視野で企業が抱える課題の解決に取り組んでいます。

そのような環境の中で、自ずと高いスキルが磨かれ、優秀な人材が育っていくのです。

日常的に複雑な環境に触れ、柔軟な対応力を持ったメンバーが揃っていること、それがIBCのソリューション力の高さにつながっています。

アイビーシー株式会社 2025年9月期 第2四半期 決算説明資料 より引用

アイビーシーの成長戦略

市場環境と今後の方向性

公共、特に文教市場においては、「GIGAスクール構想(小・中・高校の生徒向けの1人1台端末と高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備し、個別最適化された創造性を育む教育を実現する構想)」の進展が大きな追い風となっています。

GIGAスクール構想はスタートから5〜6年が経過し、現在はNEXT GIGAとして第2期に入っております。

そのなかで、構想スタート当初に整備した1人1台の情報端末の更新(劣化による入れ替え)やネットワークの課題の解消を進めなくてはならず、学校はネットワーク環境の評価・診断(アセスメント)を行い、その結果を根拠としないと新たな予算を確保できないという状況にあります。

このため、文教市場におけるICT投資の規模感や今後の継続性が、以前に比べて明確になってきていると感じています。

IBCは創業から23年にわたり、数百社に及ぶ様々なメーカーの機器を自ら検証し、その中で得られた豊富な知見とノウハウを培ってきました。

マルチベンダー環境における可視化技術や、ネットワークのアセスメントに関しては、他社には真似できない強みを持っていると自負しています。

さらに、現場の実際のニーズを汲み取りながら開発を重ねてきた自社製品が、市場に生じた空白を埋める重要な役割を担っています。

最近ではネットワークのアセスメント受託案件も増加しており、それをきっかけとして、より大規模な改善プロジェクトやツールライセンスの販売などへ収益源を広げていけると考えています。

このような多様な収益基盤を築くことで、企業規模を超えた高い付加価値を生み出し、さらなる利益成長を実現していくことができると確信しています。

アイビーシー株式会社 2025年9月期 第1四半期 決算説明資料 より引用

「GIGAスクール構想」に対してのアプローチ

「GIGAスクール構想」がスタートしてから、5〜6年ほど経ちます。

当初の目的であるタブレットやパソコンの一人一台配布は、多くの学校で一旦整備が完了しました。

しかし実際にオンライン授業を始めてみると、「アクセスポイントにアクセスが集中して映像がスムーズに視聴できない」といった新しい課題が浮かび上がっています。

アイビーシー株式会社 2025年9月期 第1四半期 決算説明資料 より引用

そこで最近では、自治体や学校がネットワーク環境の課題を事前に診断し、その結果を基に予算申請を行うという流れが生まれています。

このネットワークのアセスメント自体にも、当社IBCが参入できる大きな可能性を感じています。

実際に、文教分野を得意とする販売代理店(リセラー)を通じて、当社の「System Answer G3」を活用したアセスメントのご依頼が増えてきています。

さらに、アセスメントの結果に基づいて予算が確保された場合には、当社の監視ツールを本格的に導入していただく、という新たな流れもでき始めています。

このような流れが徐々に案件数を押し上げ、当社としても目に見える成果につながりつつあります。

今後ますます、この領域で当社の強みを活かしていけると期待しています。

アイビーシー株式会社 2025年9月期 第1四半期 決算説明資料 より引用

自治体へのアプローチ

最近では、先進的な自治体を中心に、住基ネットや各種行政ネットワークを活用した取り組みが広がっています。

たとえば印鑑証明をコンビニで手軽に取得できるサービスがありますが、その裏側には、安定した自治体ネットワークの存在が欠かせません。

政令指定都市をはじめとする大規模な自治体ほどネットワークの規模も大きくなり、システム運用を担当するメーカー系SIerもさまざまです。

ただ、どの自治体にも「ネットワークを絶対に止められない」という強いニーズは共通しています。

たとえば、住基ネットなどの自治体システムが停止すると、マイナンバーカードが使えない、住民票や証明書が発行できないといった、社会に混乱をもたらします。

そのため、自治体や国、さらには各省庁の外郭団体に至るまで、ネットワークの安定稼働に対する意識は年々高まっているのです。

私たちIBCは、このようなニーズに対して自社製品やソリューションを提供できる余地が大いにあると考えています。

自治体や公共機関向けのITインフラ監視や運用支援は、当社がこれまで培ってきたノウハウを最も活かせる分野の一つであり、今後もさらなる成長を期待できる領域だと思っています。

アイビーシー株式会社 2025年9月期 第1四半期 決算説明資料 より引用

注目していただきたいポイント

「何か問題が起きたときに、その原因や発生元を特定するためのデータをしっかりと持っているかどうか」は、企業経営をする上で大切になっていくと考えています。

実際のところ、こうしたデータを十分に管理できていない企業がまだまだ多いように感じます。

たとえばランサムウェアの被害を受けてしまった企業では、「データが暗号化されてしまったから、もう身代金を支払ってしまおう」といった判断をする経営者も少なくありません。

これでは攻撃者を利するだけですし、本当にそれで良いのだろうかと疑問に感じます。

今後企業の経営者には、ネットワークやサーバー、セキュリティといった自社のITインフラの状況をもっと把握していただきたいのです。

「ITインフラの現状をきちんと把握できていますか?」という問いかけを、私たちはもっと多くの企業に伝えていこうと思っています。

ネットワークにつながっているすべての機器や環境を可視化することは、セキュリティ対策だけでなくコスト削減にも大きく役立ちます。

実際に、経営者の方から、「情報システム部門がブラックボックス化していて、何にどれだけのお金が使われているのか分からない」という悩みをよく伺います。

当社の「System Answer G3」を活用すれば、システムの稼働状況や費用対効果が目に見えて分かりますので、「実際にはあまり使っていないのに、高額な大手メーカーのツールを使い続ける必要があるのだろうか?」といった具体的な見直しにも繋がります。

今後の営業戦略としては、大手メーカー系SIerが提供している監視ツールからのリプレースを目指すのか、それとも現在フリーツールで対応している企業の市場を狙うのか、といった判断が重要になってきます。

当社のツールは業種や業界を問わず、様々な環境やニーズに応えられる汎用的なものであるため、これからますます広い市場に拡大できる可能性を秘めていると考えています。

アイビーシー株式会社 2025年9月期 第2四半期 決算説明資料 より引用

投資家の皆様へメッセージ

当社は創業以来23年間、一貫して「ネットワークの可視化」という専門的な領域に特化し、独自のポジションを築いてまいりました。

私自身、まだネットワークの構築が非常に困難で、企業が高コストを払うことが当たり前だった時代から、ブロードバンドの可能性にいち早く注目し、ICTインフラを管理するための課題解決に取り組んできました。

当社が最大の強みとしているのは、130以上ものメーカーが混在するマルチベンダー環境に対応できる高い可視化技術です。

特定のメーカーや機器に依存せず、多様なITインフラを一元的に管理できる製品「System Answer G3」を展開し、企業が直面するトラブルの原因を迅速かつ正確に把握し、解決まで導けるようサポートしています。

現在、文教市場では「GIGAスクール構想」を背景に、ICT環境の整備が急速に進められています。

官公庁/公共分野でも、自治体においてネットワーク環境の安定稼働に対する意識が高まり続けています。

また、これらの分野に限らず、インターネットの利用が当たり前の世の中において、当社が提供する製品・サービスはあらゆる業種、業界で活用いただいております。

投資家の皆様には、ぜひこのような市場における当社の希少性と技術的な優位性にご注目いただきたいと思います。

これからも市場のニーズを的確に捉え、収益源の多様化を図りながら成長を続け、企業価値のさらなる向上を目指してまいります。

アイビーシー株式会社

本社所在地:〒104-0033 東京都中央区新川1-8-8 アクロス新川ビル2F

設立:2002年10月16日

資本金:443,530千円(2024年12月末時点)

上場市場:東証スタンダード市場(2015年9月15日上場)

証券コード:3920

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