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【7363】株式会社ベビーカレンダー 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2025年4月15日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社ベビーカレンダーは「みんなの笑顔でいっぱいに」を軸に、あらゆる課題を解決するメディア会社です。

代表取締役の安田 啓司氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

株式会社ベビーカレンダーを一言で言うと

課題を解決するメディア会社です。 

ベビーカレンダーの沿革

株式会社ベビーカレンダー 代表取締役 安田 啓司氏

創業の経緯

少し複雑な経緯になるのですが、この会社自体はもともと1991年に設立された会社です。

私が当社に関わり始めたのは2015年のことで、その頃はクックパッド株式会社(以下クックパッド)の役員を務めていました。

当時、クックパッドは料理以外の生活分野にも事業を拡大しようと、新規事業を積極的に立ち上げている頃でした。

その一つに妊娠・出産領域の事業があります。

この分野は私自身が以前から関心を持ち、経験も豊富だったので、「ぜひ手がけたい」と強く思いました。

その一環としてクックパッドは当社を買収することになったのです。

当時、会社の名前は「日本テクト株式会社」といい、産婦人科向けに業務効率化を支援するサービスや、患者さんの集客支援サービスを提供していました。

そして、全国で約200の産婦人科とお取引がありました。

クックパッド自身も「クックパッドベビー」というメディアを運営しており、そのメディア事業をこちらに移管し、両社のシナジーを活かして伸ばしていくことを目的に事業をスタートさせました。

なぜこの事業を始めたかと言いますと、「ウェルク問題」と呼ばれる医療系情報サイトの問題が関係しています。

当時、インターネットで医療情報を検索すると、DeNAさんが運営する「ウェルク」というサイトが検索上位を独占していました。

このメディアに投稿されている記事は、根拠の薄い内容のコピー記事ばかりで、情報の信頼性が非常に低いものでした。

この状況を受けてGoogleも対策を行い、信頼性の低いサイトを検索順位から下げる措置を取ることとなります。

ちょうどそういった時期でしたので、妊娠・出産関連の検索結果に関しても”信頼できない情報”が溢れており、私はこれを深刻な問題として捉えていました。

そして、私は前職時代に、「たまごクラブ」「ひよこクラブ」といった妊娠・出産系の雑誌や、「ウィメンズパーク」というママ向けの交流サイトを手がけていたので、「自分ならきちんとした情報を届けられる」と確信していました。

そんな背景もあり、しっかりとした妊娠・出産情報のメディアを立ち上げることにしたのです。

もちろん、メディアだけでは信頼性が弱いと感じていましたので、買収した会社と関係の深い先生方や助産師さんに協力をお願いし、現場の生の声を取り入れながら、信頼度を高めていきました。

こうして「ちゃんとした情報を発信するサイトを作ろう」とスタートしたのが、2015年のことです。

その後、MBO(マネジメント・バイアウト)を決断し、2017年にクックパッドから独立しました。

その際に、社名も現在の「株式会社ベビーカレンダー(以下ベビーカレンダー)」へと変更しました。

事業と領域の拡大

MBOを実施した2017年以降、当社は徐々に力をつけ、妊娠・出産の分野でかなり大きな情報提供サイトへと成長することができました。

2021年には業績も順調に伸び、東証マザーズ(現在のグロース市場)への上場も果たしました。

現在は事業の拡大を目指し、社内で新しいメディアを立ち上げたり、ご縁があればM&Aを通じて外部のメディアを取り込んだりしながら、大きく成長しています。

当社が最初に掲げたスローガンは、「A Sea of Smiling Babies(赤ちゃんの笑顔でいっぱいの世界を作る)」というものでした。

赤ちゃんが笑顔なら、そのお母さんも自然と笑顔になれる。

お母さんが笑顔なら、きっとお父さんも笑顔になる。

こうして周りの人たちも次々に笑顔が広がっていくと信じています。

当社は「まずは“笑顔の原点”となる赤ちゃんたちを笑顔で満たしたい、この分野でNo.1になろう」という想いでスタートしています。

そして、その目標はある程度達成できたかなと感じており、次なる目標として「女性の笑顔でいっぱいにする」ことを掲げています。

女性にはライフステージごとに、本当にいろんな課題があります。

たとえば、中学や高校になると、生理や体調の変化に悩むことがあります。

働く女性には、日常生活やキャリアに関するさまざまな悩みが生じます。

そして40代、50代になれば、更年期障害やシニア世代特有の問題にも直面します。

ただ、そうした問題に真正面から向き合い、きちんと情報を届けるメディアというのは、意外なことに少ないんです。

今のところは「悩んだら病院に行ってください」としか言えない状況となっています。

こうした現状に対して、私たちは、もっと気軽にアクセスできて、かつ信頼できる情報を提供したいという思いで、少しずつ事業領域を広げています。

株式会社ベビーカレンダー  より提供

ベビーカレンダーの事業概要と特徴

概要

当社のビジネスモデルには、大きく分けて2つの柱があります。

一つはメディア事業(BtoC)、もう一つは医療法人向け事業(BtoB)です。

株式会社ベビーカレンダー 2025年3月 事業計画及䜃成長可能性䛻関する事項 より引用

まずメディア事業では、妊娠・出産・育児に関する情報を発信する「ベビーカレンダー」を中心として、アンチエイジングに特化した「ウーマンカレンダー」、生理や恋愛、美容に関する情報を届ける「ムーンカレンダー」など、女性のライフステージや関心事に寄り添った複数のメディアを運営しています。

メディア事業の主な収益源は広告収入です。

具体的には、ページビューに連動した広告、成果報酬型広告、そしてクライアント様と直接企画するタイアップ広告などがあります。

一方、医療法人向け事業では、産婦人科を中心とする医療機関向けに、ベッドサイド情報システムである「ベビーパッド」や、クラウド型で簡単に利用できるオンライン診察予約システム「かんたん診察予約システム」など、医療現場の業務効率化をサポートするさまざまなサービスを提供しています。

こちらの主な収益源は、医療機関からいただくサービス提供料となっています。

株式会社ベビーカレンダー 2025年3月 事業計画及䜃成長可能性䛻関する事項 より引用

事業における優位性

コンテンツクオリティを維持する編集者の存在

私たちは、「絶対に正しい情報を届ける」というコンセプトを社内でとても大切にしています。

その理念を実現するために、当社では非常に優秀な編集者を揃えています。

ウェブメディアというと、一般的には外部ライターが記事を書いて納品するスタイルが主流です。

しかし、私たちの場合は少し違います。

現在、社内には40〜50人ほどの編集者がおりますが、その多くが雑誌編集の経験を持つ人材です。

雑誌編集というのは、想像以上に手間や労力がかかる作業ですが、その経験を通じて、「読者が本当に困っていることは何か」「どのような情報を提供すれば満足していただけるのか」といった感覚を身につけていきます。

つまり、「質の高いコンテンツを企画する力」と、それを「きちんと形にして届ける力」の両方を兼ね備えているわけです。

私たちは、こうした雑誌編集者ならではの力を、インターネットの世界でも最大限に活かしたいと考えています。

手間暇を惜しまずにコンテンツを作り込み、丁寧な編集を心がけているのです。

さらに、社内の編集者のもとには、編集者一人ひとりに10人〜20人ほどの外部スタッフがいます。

編集者自身がすべての企画を立て、その企画に基づいて細かく指示を出し、制作を進めています。

メディアを運営する上で、私たちが最も恐れていることは「パクリ記事」の問題です。

顔の見えない外部ライターに任せきりにすると、どうしても盗用などが発生するリスクがあります。

実際、他のメディアではそうした問題で会社が大きな打撃を受けることも珍しくありません。

だからこそ当社では、「絶対にパクリ記事を出さない」ということを徹底しており、入念なチェック体制を敷いています。

また、私たちは「一度作ったらそれで終わり」ということは絶対にしません。

たとえば出産時にもらえる補助金などの制度は頻繁に変わりますから、10年前の情報をそのまま掲載し続けるわけにはいきません。

制度が変われば、それに合わせて記事も必ず更新します。

主要な情報については、常に最新の状態になるようにアップデートを繰り返しています。

このように、「正しい情報をきちんと届ける」という姿勢を徹底していることが、私たちの事業における大きな優位性だと考えています。

専門家のネットワーク

もう一つ、当社の大きな特徴として挙げられるのが、外部の専門家の方々からご協力をいただいていることです。

編集者はあくまでも「編集」のプロであり、医療の専門家ではありません。

そのため、医療や健康に関する情報を取り扱う際には、現在約400名ほどいらっしゃる外部の専門家の先生方に相談し、しっかりと監修をしていただいています。

情報の正確さや信頼性を専門家の視点で確認していただき、それを「監修」という形でコンテンツに反映しています。

そもそも、この会社を立ち上げた際に「産婦人科とのつながりが私たちの大きな強みになる」という考えがありました。

このような専門家とのネットワークを持っているからこそ、ユーザーの皆さんに信頼性の高い情報を提供することができるのです。

また逆に、産婦人科の先生方にとっても価値ある情報を提供できていると感じています。

先生方から見れば、私たちは「産婦人科向けのソリューションを提供している企業」という印象が強いと思います。

具体的には、患者さんが便利に利用できる予約システムや、超音波エコーの動画をスマートフォンで簡単にダウンロードできる仕組みなど、現場で本当に役立つさまざまなサービスを提供しています。

そして当社にはなんと言っても、「医療ソリューションとコンテンツをセットで提供している」という特徴があります。

産婦人科の現場では、妊娠や出産について患者さんが疑問や不安を抱えていると、先生や助産師さんが直接説明や対応を行っています。

しかし、実はそういった現場を支える「教科書」のようなきちんとした資料はあまり存在しません。

そこで当社は、動画や読み物などさまざまな形式でコンテンツを産婦人科の現場に提供しています。

もちろん、すべてのクリニックがそのまま私たちのコンテンツを活用しているわけではありません。

各クリニックの先生方にはそれぞれの方針がありますので、中には再編集したり、独自のオリジナルコンテンツを作成されたりするケースもあります。

いずれにしても、当社のことは医療ソリューションと信頼性の高いコンテンツをセットで提供している企業として認知されているのではないかと思います。

このように、リアルな現場とネットの世界を自由に行き来できるのが、私たちベビーカレンダーの一番の強みではないでしょうか。

株式会社ベビーカレンダー 2025年3月 事業計画及䜃成長可能性䛻関する事項 より引用

ベビーカレンダーの成長戦略

メディアの多角化と業界の拡大

現在、当社では14のメディアを運営しています。

これを将来的には20、さらには50まで増やしていきたいと考えています。

その理由は、メディア運営はどうしても一本足打法になりやすく、不安定な部分があるからです。

たとえばGoogleの検索評価は年に数回変動するため、そのたびに検索順位が上下し、会社としても一喜一憂することが少なくありません。

評価が落ちると、時には「このまま会社が潰れてしまうんじゃないか」と心配するような状況にも陥りかねないのです。

しかし、複数のメディアを運営していれば、「ある領域のメディアの順位が下がっても、別の領域は逆に上がる」という状況が生まれます。

つまり、すべてのメディアが同時に悪化するということはほぼないのです。

複数のメディアを持つことで、リスクを分散できるのが大きなメリットだと感じています。

もう一つの理由は、先ほどお話しした「編集力」を最大限に活かせることです。

当社の編集者は、対象とするメディアが変わったとしても、同じように質の高い編集スキルを発揮できます。

一般的には会社内でまったく別の職種に異動をすると、なかなかうまくいかないこともあります。

しかし、ターゲットの異なるメディア間の異動であれば、スムーズに対応できます。

昔の総合出版社が複数の領域の雑誌を同時に運営していたように、当社も「こちらのメディアで編集長を務めていた人が、次は新しいメディアの編集長に挑戦する」といったように、戦略的に事業を広げていきたいと考えています。

株式会社ベビーカレンダー 2025年3月 事業計画及䜃成長可能性䛻関する事項 より引用

産婦人科領域以外の開拓と新規事業の成長

産婦人科の数自体は、現在、全国で1,500〜2,000件ほどあると言われています。

ただ実際には、この数年ずっと減少傾向にあるのが現状です。

そのため、当社の取引先も一部減ってきています。

しかし幸いなことに、新しくご契約いただける医療機関がそれ以上に増えているため、全体としてはうまくバランスが取れている状態です。

とはいえ、産婦人科という市場そのものが縮小しているのは否めません。

そこで数年前から、産婦人科以外の医療領域にも少しずつ進出を始め、現在も徐々にその範囲を広げています。

また最近では、M&Aにより買収した「メディカルリサーチ」という会社とのシナジー効果が表れ、新規開拓をする上で非常に良い成果が出始めています。

メディカルリサーチのチームは全部で5人、そのうち4人が営業担当ですが、とにかく彼らの営業力には目を見張るものがあります。

従来からある医療法人向け営業のチームも、メディカルリサーチから営業手法や開拓のやり方を毎週のミーティングで共有してもらっており、とても助けられています。

株式会社ベビーカレンダー 2025年3月 事業計画及䜃成長可能性䛻関する事項 より引用

注目していただきたいポイント

ここ2年ほど、当社は業績の下方修正を連続して実施してきました。

ただ、ようやくここにきて状況が好転し始めており、「これから上昇していこう」という私たちの想いと現実が、やっと一致してきたと感じています。

2〜3年前を振り返ると、気持ちだけは前向きでも、残念ながら数字が追いついていないという状況でした。

しかし昨年、ようやくそれらが噛み合い始め、決算でも一定の成果を出すことができました。

今では社内の雰囲気も明るく、社員の表情からも前向きな勢いを感じています。

なぜここまで時間がかかってしまったのかと振り返ると、やはり「編集者を育てる時間」が一定期間必要だったというのが一番の要因だったと思います。

もちろん、最初からコアとなる優秀な編集者はいたのですが、全員がそのレベルにあったわけではありません。

組織全体で高い編集スキルを共有できるようになるまでには、予想以上に時間が必要だったというのが正直なところです。

現在では、地道に育成してきた編集者たちがようやく十分な力を発揮するようになり、私自身も「組織としてようやく人材が充実してきたな」と強く感じています。

今後については、もう伸びていくだけだと思っています。

メディア事業の成長はもちろん、利益の面においても計画を上回る成果をお見せできるよう、自信を持って取り組んでいますので、ぜひ期待していただけると幸いです。

投資家の皆様へメッセージ

当社の事業は、「利益を第一に追求する」というタイプのビジネスモデルではありません。そのため、時には成長までに少し時間がかかってしまうこともあります。

だからこそ、投資家の皆様には長期的な視点で、じっくりと当社の取り組みを見守っていただけましたら大変ありがたく思います。

これからもどうぞ応援のほど、よろしくお願いいたします。

株式会社ベビーカレンダー

本社所在地:〒151-0053 東京都渋谷区代々木1-38-2 ミヤタビルディング10F

設立:1991年4月5日

資本金:28億503万円(2024年6月末時点)

上場市場:東証グロース市場(2021年3月25日上場)

証券コード:7363

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