※本コラムは2025年1月27日に実施したIRインタビューをもとにしております。
※本コラムは2025年1月27日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社ニチリョクはお墓・お葬式・終活を提供するシルバーファミリーコンサルティング会社です。
代表取締役社長の三浦 理砂氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。
株式会社ニチリョクを一言で言うと
「寄り添う」を合言葉に、葬儀・お墓をはじめ、終活全般に一社通貫でサポートを提供し、シニア世代とその家族に今とこれからに安心を提供する企業です。
ニチリョクの沿革

創業の経緯
当社の起源は、1966年12月にダイレクトメールの発送代行を目的として設立された「日本ホームサービス」です。
その後、1980年2月に墓石の販売・施工業を開始しました。
1983年11月には、多摩聖地霊園の募集・販売を開始し、霊園事業に進出しました。
1987年1月には、現在の社名である「株式会社ニチリョク」へと変更し、1998年2月には店頭登録し、株式を公開しました。
これにより、当社は墓石業界で初めての上場企業となりました。
シニアライフサポートの推進
1999年には、日本で初めて自動搬送式納骨堂の販売代行を開始しました。
翌年の2000年には、生花祭壇のみを使用した葬儀サービスの提供を始めるなど、革新的なサービスを次々と展開してきました。
そして、2020年には財務改善、成長戦略の再構築、企業価値の向上、そして新たなビジネス機会の創出を目指し、アリスタゴラ・アドバイザーズ(正式名称:バリューアップ・ファンド投資事業有限責任組合)からの出資を受けました。
そのような中、私は2022年6月に入社しました。
それまでのキャリアでは、20年以上にわたり生命保険業界に従事していました。
生命保険も「終活」の一環といえますが、父の死をきっかけに葬祭を手がける葬祭ディレクターの仕事に強く関心を持つようになりました。
ちょうどその頃、アリスタゴラ・アドバイザーズの篠田会長と話す機会があり、ニチリョクがシニア向け事業の一環として生命保険事業などを展開していく構想を持っていることを知りました。
私はこれまでの経験と今後やりたいことを考えた結果、「本当に困っている人の役に立つ仕事をしたい」という思いと一致し、終活営業部部長として参画することになりました。
入社後は、保険の乗合代理店を立ち上げ、終活全般へと事業を拡大しました。
そして、終活セミナーを開催する中で、お客様から最も多く寄せられる相談は「おひとりさまの終活」に関するものでした。
そこで、身寄りのない高齢者が安心して生活できるようにサポートする商品を開発し、2024年1月から「ニチリョクの安心サポート・パックプラン」の提供を始めました。
2024年7月から新体制に
私は2024年7月1日付で、代表取締役社長に就任しました。
この役目を任された理由は、「営業力」にあると考えています。
葬祭事業やお墓事業は、積極的な営業を行うのではなく、お客様が必要になったときに求められるビジネスです。
一方で、保険の営業はお客様がいない状態から開拓し、一見ニーズがないように思われる方であっても、潜在的なニーズを掘り起こさなければいけません。
今後、新規ビジネスを展開していくにあたっては、積極的な営業が必要になる場面が増えていきます。
そのような環境の中で、「営業ができる人材」として私が選ばれたのだと考えています。

ニチリョクの事業概要と特徴
概要
当社は、シルバーファミリーコンサルティング企業を目指し、「供養」をはじめ、シニア世代の晩年と、その後の対応関するサービスを総合的に提供しています。
三つの事業を柱として展開し、お客様のさまざまなニーズに対応しています。
一つ目は、お墓事業です。
宗旨・宗派を問わない公園墓地を中心に、東京、神奈川、埼玉、千葉などにある霊園や境内墓地の販売代行を手掛け、一般墓、永代供養墓、樹木葬など、多様な形態のお墓を取り扱っております。また、自動搬送式納骨堂の販売代行も行っています。
二つ目は、葬祭事業です。
お客様のご要望に応じた葬儀を執り行うため、経験豊富なスタッフが、ご遺族の気持ちに寄り添い、葬儀を提供しています。
三つ目は、シニアライフサポート事業です。
「終活」をキーワードに、遺言や遺品整理、不動産、保険などのライフサポートサービスを提供しています。
中でも、近年ニーズの高まっているおひとりさま向けの総合的なサポートサービスを開発し、高齢者が安心して暮らせる環境を整えています。

事業における優位性
トータルシニアライフサポート
当社の最大の強みは、一気通貫のサービス体制を実現する「トータルシニアライフサポート」にあります。
お葬式の施行だけでなく、お墓や生前の終活支援までを含めた総合的なサービスを提供しています。
通常、お墓を取り扱う企業と葬儀を執り行う企業は別々ですが、当社は他社とは異なり、個別のサービスを提供するのではなく、一貫したサポート体制を整えています。
お客様一人につき、一人の担当者が最初から最後まで対応することで、事前準備から葬儀、その後の供養までを一貫して支援しています。
将来的には、どのようなきっかけで当社を知っていただいた場合でも、あらゆるお困りごとに対応できる体制を構築することを目指しています。
幅広いネットワーク
当社は、長年にわたり斎場や葬儀社、寺院とのネットワークを築いてきました。
寺院に関しては、宗旨・宗派を問わず幅広く対応できる体制を整えています。
また、全国各地の公営霊園、共同墓地での墓じまいにも対応可能です。
納骨堂の販売代行をする名古屋では、現地寺院の住職と連携し、情報共有を行いながら、葬儀社とも協力し、円滑なサービス提供を行っています。

ニチリョクの成長戦略
社内連携の強化
2024年7月から新体制となりましたが、それ以前は「葬儀」「お墓」「終活」がそれぞれ独立して運営されており、社内での連携がほとんどありませんでした。
たとえば、ご葬儀を行ったお客様がまだお墓を準備していない場合、本来であれば自社で取り扱う霊園や納骨堂を案内する流れが自然ですが、実際にはそのような連携がほとんど行われていませんでした。
現在は、各事業の連携を強化し、一貫したサービスを提供できる体制を整えています。
その一環として、新たに「トスアップ制度」を導入しました。
たとえば葬儀担当社員が「お墓の購入を検討しているお客様がいる」と報告し、その結果として200万円のお墓が成約した場合、その情報を提供した社員も成約した社員と同等の評価が得られる仕組みです。。
この制度の導入により、各事業部門が単独で売上を追求するのではなく、横断的に協力する体制が生まれ、より良いシナジーを創出できるようになっています。
また、評価制度も新体制に合わせて調整し、社員がより協力しやすい環境を整えています。
革新的なサービスの提供
近年は、新しい葬儀の形として「本堂葬儀」に力を入れています。
最近の葬儀の多くはセレモニーホールで行われていますが、「本堂葬儀」は寺院の本堂で執り行うものです。
本来、寺院の本堂での葬儀は檀家でなければできないのですが、「本堂葬儀」の場合、檀家でなくても本堂での葬儀が可能です。現在、首都圏16カ寺でご利用いただけます。
通常のセレモニーホールは簡素な印象になりがちで、どこか寂しい雰囲気になることがありますが、寺院のご本尊が祀られる本堂での葬儀は、厳かな雰囲気の中で行うことができます。
一定の費用はかかりますが、実施した事例では非常に高い満足度を得られており、今後は富裕層向けのサービスとしてさらに展開していく方針です。

また、将来的な成長を見据え、シニアライフサポート事業の強化も進めています。
人生100年時代と言われる現在、長生きするための支援を提供することが重要になっています。
その取り組みの一環として、久保山にある葬儀施設の一角をカフェに改装し、地域の方々が気軽に集える場所を作りました。
この「ラステルカフェ」では今後一般的な「終活セミナー」だけではなく、健康セミナーなどより幅広いテーマのセミナーを開催していこうと考えています。。
「ラステルカフェ」は坂の上に位置し、ふもとまで降りれば商店がありますが、高齢者にとっては移動が負担になることがあります。
そのような背景から、「気軽にコーヒーを飲める場所を作ろう」と考え、周辺の商店とも連携しながら運営しています。
2025年1月にオープンした「ラステルカフェ」は、開店以来、来客が途絶えることなく、多くの方に利用されています。
コーヒーは一杯300円程度と手頃な価格で提供し、内装は従業員が手作りしました。
地域にはこうしたカフェが少ないこともあり、住民の皆さんから高い評価を得ています。
都内・横浜市・流山市に開設し、お客様のご要望をお伺いし、希望に合う墓地を一緒にお探しする「お墓の相談サロン」を開設し、、地域の方々が気軽に相談できる環境を整えました。
しかし、こうした施設を継続的に運営するためには集客が重要なポイントとなるため、マーケティング戦略の強化にも取り組んでいます。
これまでオフライン中心だった集客方法をオンラインにも拡大し、特に地域密着型のアプローチを強化しています。
お墓は遠方ではなく、住み慣れた地域で購入されることが多いため、地元の方々に向けた情報発信を積極的に行っています。
今後も、地域の方々にとって身近な存在となるよう、こうした地域密着型の施設を増やしていく予定です。

戦略的提携
2023年夏から法人営業部を本格的に立ち上げ、ターゲットをカテゴリーごとに分類し、さまざまな業界と業務提携を進めています。
また、当社は高価格帯の商品・サービスを提供しているため、富裕層向けの市場を意識した戦略を展開しています。
具体的には、証券会社やプライベートバンク、プライベートエクイティを強化している証券会社との提携を進めています。
こうした企業は富裕層の資産運用をサポートしており、お客様のライフプランに密接に関わるため、葬祭や終活のタイミングで当社を紹介してもらえる可能性が高いと考えています。
また、老人ホームや介護施設を運営する企業とも提携を進めています。
高齢者が入居を検討するタイミングは、終活を意識するきっかけの一つとなります。その際に当社のサービスを紹介してもらえるよう、関係を強化しています。
このように、ターゲットとなるお客様がどのタイミングで終活を意識するのかを分析し、提携先からの紹介によって新規顧客を獲得できるよう、戦略的な提携を進めています。
注目していただきたいポイント
現在、業界全体が「安価なサービス」へと傾いています。
コロナ禍をきっかけに葬儀の簡素化が進み、それに伴い葬儀社の数も急増しました。
広告では「家族葬◯万円」といった低価格プランを打ち出しながら、実際に契約してみたら、想定以上の高額な葬儀になる業者も少なくありません。
その結果、一見すると安価に見えるプランでも、最終的な支払い額が当社よりも高くなるケースが見受けられます。
当社は上場企業として、そのような不透明な手法を取るつもりはなく、お客様に対して「安ければ良い」という考え方ではなく、葬儀本来の意味や大切さを伝えていくことを重視しています。
当社のサービスは決して格安ではありませんが、高額すぎるものでもありません。
単価を下げて売上を追求するのではなく、本来の葬儀の意義を大切にしながら、ご遺族が故人に感謝の気持ちを伝えられる時間を提供できるサービスを目指しています。
近年、「葬儀を行うかどうか」という議論すら生まれていますが、その風潮に対して強い危機感を持っています。
「葬儀は不要で、火葬のみで十分」と考える方が増えていますが、グリーフケア(遺族の心のケア)の観点から考えると、葬儀を簡略化することで、後になって「きちんとお別れできなかった」と後悔につながる可能性があります。
実際に、そのような声を聞く機会もありました。
最も重要なのは、「どのようにお別れをするか」だと考えています。
葬儀を行わなくても、ご遺体を一定期間安置できる場所があれば、親しい方が最後のお別れをする時間を持つこともできます。
しかし、このような選択肢があることは、私たちのような専門家に相談しなければ知る機会がありません。
今後、葬儀本来の意義を改めて伝え、業界全体に対してその価値を問いかけていきたいと思います。

投資家の皆様へメッセージ
短期的には、業界全体の動向を踏まえると、厳しい局面が続いています。
しかし、長期的に見れば、必ずお客様は戻ってくると確信しています。
葬儀を簡素化したことで後悔する人が増えており、安価なサービスは最終的に淘汰されていくと考えています。
命の大切さを真剣に考えれば、「死」に対する意識も変化していくはずです。
当社は、今後もその価値をしっかりと伝え、業界の健全な発展に貢献していきます。
株式会社ニチリョク
本社所在地:〒103-0028 東京都中央区八重洲1-7-20八重洲口会館8階
設立:1966年12月22日
資本金:18億6575万4672円(2025年1月アクセス時点)
上場市場:東証スタンダード市場(1998年2月20日上場)
証券コード:7578